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単独行

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世界の山の単独紀行

滑落、負傷、ビバーク、そして生還 -コンマラ越え

滑落、負傷、ビバーク、そして生還 - コンマラ越え
エベレスト周りに標高5500mクラスの三つのパス(峠)が有る。2012年の第二次ヒマラヤ遠征でこの三パス越えに挑んだ。先ずレジョンパスを越え、次にチョラパスを攻略したが下山でルートを見失い、日没も重なり4500mの地点でビバーク(強制露営)を余儀なくされた。ビバークで受けたダメッジで、残りのコンマラパス(5535m)はその年は諦めた。そして2014年の11月、第四次遠征である。当然、コンマラ越えを企てた。コンマラは距離も長く、標高差も大きいので日本からの公募山岳ツアーでは通常、シェルパ、ポーターを伴う三日間の幕営山行で企画されている。それを単独日帰りで切って落とすのが今回のテーマ。日本を出てから10日ほど経った早朝5時、ロブチェ(4,930m)の山小屋を出た。明るい内にコンマラを越えたいと、気は焦るが氷河を横切るルートがなかなか見つからない。何とかクレバスを避け、取り付きに出た。見上げるパスは剣岳の三ノ窓の様に尾根に深く切り込まれていた。今日中にパスを越えて反対側のチュクン(4743m)へ辿り着かなければ。急いで登り始めたが高度の影響か、荷物が重いのか、ピッチが上がらない。それでも予定より2時間遅れてやっと、午後2時にコンマラへ着いた。パスからは、氷河湖越しにマカルーが美しい山容を見せてくれる。寒い。ドドーン、大砲の様な音が響く。氷河湖の氷が競り合って鳴っているのだ。見とれていて、ふと我に返った。イケない30分も経っている。駄目だ、早く降りなければ日が暮れる。下降路を探すがパスの下は切り立ったガリーと成っていて、ルートが見つからない。パスより上方のリッジに微かな踏み跡、行って見よう。しばらく登った所からルートは、はっきり見えないが降りてみる。ザクザクの急なガリー、構わず下る。と、バランスを崩し頭から滑落、2,3回転げて手をついて止まった。助かった。けがは無いようだ。
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  エベレスト(8848m)とヌプチェ     コンマラから見たマカルー(8463m)

氷河湖までは100m、降りてみればパス直下よりルートが有った。高原状の気持ち良い暖斜面を2時間ほど下りた所で、気づいたらエベレストの衛星峰ヌプチェ(7879m)が残照を受けバラ色に輝いている。美しい、でも急がないと、写真も撮らずに谷状傾斜をトラバースして行く。踏み跡が見えづらく成って来た。ヘッドランプを出そう。ザックをリッジに降ろした途端、有ろうことか、ザックが雪の斜面を転げ落ちていく。止まれ、良し、30m程下の岩角に止まった。ランプの明かりを頼りに尚も下って行く。いつの間にか踏み跡が無くなっている。どうもルートを外れたようだ。それでも谷の底面を追って下り続けると、大きな岩がゴロゴロしている斜面に出た。時計を見ると、何と9時だ。疲労も限界。そうだ、この岩陰でビバークして、朝を待とう。寝袋に潜り込んで見ると、あれ、周りが血染めに成っているではないか。如何したのだろう。ア、右手の小指がパックリと裂けている。パスで滑落した時に切ったのか。消毒の為、ゲンタシン軟膏を取り出し、絞りだそうとするが凍って出てこない。何とか溶かして手当てする。11月のヒマラヤは羽毛の寝袋でも寒い。傷がズキズキ痛む。腹がへった。短いまどろみを繰り返し、長い、長い夜が明けた。バリバリに凍った荷物を纏め、1時間ほど登り直して本渓側に続くルートを発見。急な谷の僅かな踏み跡を頼りに下り、3時間ほどでメイントレッキングルートに出た。更に2時間のアルバイトでチュクンの山小屋に着く、まず、ビール、美味い、これだからヒマラヤは止められない。正面にローツェが美しい雪煙を上げ、今日も輝いていた。

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    アマダブラム(6856m)      チュクンから見たローツェ(8516m)

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by kenkaminaga | 2016-07-23 09:17 | トレッキング